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キムヒデの8th EV ENJOY TRIAL in 白浜レポート 2004/11/18 21:30

 

台風24号が低気圧に変わった・・・
 やぁ、みんな元気かい? 最近、キムヒデレポートが遅れ気味で、いまかいまかと新作の登場を待っていたみなさん。長らく、お待たせしました。紀北工業高校の中岡先生!、さっそくプリントアウトして藪下先生に渡してあげて下さいね。みんなもこれを読む前に、2003年白浜の「復習」もしっかりとやっおくように!!
さて、今となっては白浜も、幸田もすでに終わってしまいましたが、とりあえず、白浜からレポートしましょう。和歌山県の南紀白浜空港の会場へは、例年だと、川崎から那智勝浦までのマリンエキスプレスというフェリーで移動していました。今回は台風24号から変わった低気圧の影響で、いきなり東名高速深夜便へと変更になってしまいました。フェリーでの仮眠をあてにしてその週の仕事をしてきただけに、これはいきなり厳しい先制パンチ。まぁ、この業界にいると長距離移動は慣れたものなので、適当に走りましょう・・・。現地に着いてみると、やはり低気圧の影響で雨がしっかりと降っています。ということで、予選日の10月30日は最悪のコンディションとなりました。 今回のレポートも荒れ気味です。

第1ヒートへの挑戦
 雨の影響でフルカウル型の車体はスクリーンが水滴や曇りの影響で見えにくくなり、運転が大変だ。また、路面も滑りやすくなる。こんな状態で第1ヒートのタイムトライアルが始まった。例年は本部前をスタートしほぼ半周するコースでしたが、毎年高速化するため、今年からは最高速度を抑えるため、折り返したところでゴールとなる。だいたいコース全体の1/4周くらいを走ることになる。この予選はバッテリもモータもなんでもありのかっ飛びレース。0-400m競争みたいな感じだ。ということで、和歌山県紀央館高校の紀央館はエコランカーとしてはビッグサイズとなる自動車用のバッテリを持ち込んでいた。モータが大型化していたかはわからないので、なんとも言えませんが、バッテリーを大型化して重くするよりも電池を3直にするとかで電圧を上げた方が、予選にはメリットがあるように思います。実際のところ、24Vモータに対して12Vバッテリを3直列にするチームがかなりありました。みんな考えることは同じなのね・・・。これは、モータ電圧が1.5倍になることで、回転数が1.5倍になり、同じ電流値でも計算上は1.5倍のパワーを出せることになります。最近のアイシンさんが得意とする戦法に発想は似ていますね。その分、低回転時には実際の巻き線に電流が流れすぎないか気にする必要が出てきますが、電流が1.5倍くらいなら、短時間の予選ではなんとかもつでしょう。なかにはラジコン用のNi-Cd電池やNi-MH電池を搭載していたチームもあったようです。SHIMADAのSEV-501kaiはモータを2個搭載。(しまった・・・、去年も同じことを取材していました・・・。)

 

その他の工夫
 ボディに沿って流れる空気が剥離すると乱流となり、大きな空気抵抗を生んでしまいます。yuji@teamのスカイフィッシュIIは、名城大のNovaなどでもおなじみのフィンをボディーサイドに搭載していた。その効果については不明。大阪府立淀川工業高校自動車部のYuSS04Mは、電圧計やワットメータなどを内蔵したカーボン製ハンドルを製作していました。なかなかのこだわりですね。

 

大雨の第1ヒートは波乱の幕開け
 白浜の予選ともいえる第1ヒートは、なんといってもル・マン式スタートが特徴。ドライバーが自分の足で車体まで走って乗り込む。ソーラーカーをはじめとし、ほとんどのレースは人力で車体を押すことが禁止されているのだが、白浜の第1ヒートだけは例外的に、ピットクルーが車体を押すことが推奨されている。チームワークを大切に考えている大会の姿勢の表れでしょうか? ということで、キムヒデ自らもファラデーマジック2を押しましたよ。キムヒデといっしょに押しているのは和歌山県立和歌山工業高校出身の井谷君。高校時代から白浜に出場しているベテランなので今回特別に手伝ってもらいました。3m位は私もがんばりましたが、その後は井谷君が15mくらい押してくれました。さすが・・・。

 

 車の方が快調にスタートしてしまうと、「おーい、待ってくれー」という状況に。大誠テクノ魁のSAKIGAKEを押していたピットクルーの大嶋君は、写真を見るとほとんど力が伝わっているようには見えません。けっきょく、今年の第1ヒートも昨年の覇者である名城大学のNovaが1位となった。そして、トヨタテクノサービスの社員チームであるPROJECT-MONOのMONO-1が2位につけた。しかし、この2台は勢い余って、コースアウトしたり看板に突っ込んだりしたようだ。3位はソーラーカー界でも有名な堺市立工業高校科学部のSCIENCE 804。4位にはツインモータのSHIMADAのSEV-501kaiがきた。東海大学木村研究室のファラデーマジック2は、雨でガムテープの付きが悪くなり、スタートに手間取って25位。スバル社員チームのスーパーエナジーのGRIFFONは、視界不良のためゆっくり走ったものの、最下位の47位。走っても走らなくても結果はあまり同じだったので報われませんでした。first step AISIN AWのつばさ52号は雨のため棄権。いつもはフェリーで一緒になる成蹊大学のSEIKEI 006は、低気圧の影響でフェリーが使えないため参加そのものを取りやめ? 右の写真は、SHIMADAの山田さん。島田さんではなく山田さんということに、この大会で初めて知りました。毎回、玄人好みの渋い戦いを見せてくれます。

 

人間の充電
 さて、雨でびしょぬれになって体が冷えてしまったので、温泉に入って暖まる。ここは白浜温泉処。お湯はたっぷりです。そして、夜は民宿で海の幸。豪華な料理を前に池上さんもうれしそうです。刺身から鍋までしっかりとおなかに入れました。でも、待てよ・・・。よくよく考えてみると、これはまるで澁谷さんのバッテリー充電の人間版ですね。おかげさまで、いっぱい入っちゃいました・・・。白浜の大会は第2ヒートの直前にバッテリーを渡されるので、バッテリー充電は無いのですが、その代わり、人間がしっかりと充電されました。

大誠テクノチームは柏原芳恵さんがドライバー、中村泰士氏も応援に
 エコランを始めるにも、機械屋と電気屋が揃わなかったり、資金も必要なのでレースに参加するには、なかなか最初のハードルが高いのがEVエコラン。そんな中で、紫紋の安井社長の勢いで? なんと柏原芳恵さんが、大誠テクノ魁のSAKIGAKEのドライバーとしてレース会場に登場しました。どうも安井社長と中村氏は知り合いのようです。柏原芳恵さんは自動車レースには出たことがあるそうなのですが、エコランはもちろん初めて。SAKIGAKEの助っ人部隊には池上さんも登場し、エネルギーマネージメントという名目で長電話をかけていました。

 

第2ヒート
 最後尾にいたfirst step AISIN AWのつばさ52号はスタートと同時に一気にトップに躍り出る。もしかすると、最後尾スタートの方が高い位置にあるので、位置エネルギーで得をできると考えたのでしょうか? それにしてもちょっと強引なスタートで、コースマーシャルを蹴散らすほどのライン取りでした。そのあとを名城大学NovaのNovaが追い、さらにその後を東海大学木村研究室のファラデーマジック2が追う展開に。まもなく、ファラデーマジック2はNovaを抜き2位になるが、首位のつばさ52号との距離は徐々に引き離されていく。

 

 ところが・・・、30分が過ぎたあたりから、つばさ52号のラップタイムが悪化し始める。とは言っても、ファラデーマジック2と同じくらいのタイムなので、差が縮まるわけではない。40分を過ぎたあたりから、つばさ52号のラップタイムがさらに悪化し始め、苦しそうな感じだ。残り8分でファラデーマジック2が逆転し首位に立った。下図のラップチャートは大会のライブラリーを元に作成しましたが、つばさ52号はかなり電圧なりに走行していることがわかる。一方、ファラデーマジック2は7周目にコースアウトするなど、荒れ気味であった。NovaはPWMを絞っているのか?、ほぼ一定のラップタイムを刻んでいた。

ファラデーマジック2 vs つばさ52号の水面下の戦い
 2003白浜レポートの時にも示しましたが、電圧一定の時の白浜の走行シミュレーションをもう一度お見せします。滑走路という場所にしては、コース中央がくぼんでいて、そのまま走っていると下り坂で自然回生が行われ、登り坂では5A程度の電流が流れることになる。たった1%の坂であるのに・・・。つばさ52号やエコノ亀吉2.5号などでは、下り坂のときにはモータとバッテリを切り離して、自然回生が起こらないようにしていた。これに対して、ファラデーマジック2はトレッドが狭いため、折り返しの手前で減速する必要があった。そこで、5V-500Fの回生用キャパシタを用意し、減速の際に数V程度にまで充電していた。設定した電圧が低いため、回生効率はあまり良くないが、ブレーキで捨てるよりはマシだろう。そして、この回生用キャパシタを下り坂で上乗せしてモータで電流を消費させるという戦法を採用した。また、特殊電装のプロトタイプモータのみに付いている進角機能も使用している。いずれにしても両者の作戦は、ほぼ同じような意味あいをもっている。

 さらに、セッティング面での戦いは続く。つばさ52号では、2台の絶縁型DC/DCコンバータが搭載されていた。入力電圧と出力電圧でいうと、24V-3.3Vと12V-5Vの2種類でした。その使い方ですが、後半に電圧が落ちてきたところで、まず24V-3.3VのDC/DCコンバータで上乗せブースト。電池電圧が16Vくらいになると24V入力のDC/DCが停止するので、今度は12V-5VのDC/DCコンバータを上乗せしてブースト。それでも足りなきゃ、この状態でさらに24V-3.3VのDC/DCも上乗せブーストという合計3段階のブースト機能を搭載してきた。また、日本ケミコン製の円筒型キャパシタが10本程度見えるので、25V-60F程度の平滑用キャパシタを搭載していたと思わます。

 

 一方、ファラデーマジック2は、ブースト用24V-3.3VのDC/DCコンバータは持っていましたが、これはまず回生用キャパシタのプリチャージに使われました。また、レース終盤ではブーストとしても使用できます。一方、13.5V-70Fの日本ケミコン製角形キャパシタを2直列にした27V-35Fのキャパシタをバッテリと並列に接続し、バッテリ電流の平滑化を狙いました。この平滑用キャパシタは、レースの最後の最後に他のレース会場ではおなじみの倍電圧回路を使ってバッテリに上乗せされ、使い切られることになります。そのため、ファラデーマジック2のラップタイムは、バッテリ2個の白浜の大会であるにもかかわらず、最終のラップタイムが速くなっているのでした。

 

 以上、電気二重層コンデンサとDC/DCコンバータを使いこなす戦略面での違いを紹介しました。どっちがいいのかまでは微妙なのでわかりませんが、アップダウンに対して異なった対応でありながら、同じような効果がある対策を採っているというところが面白いですね。今回は白浜レポートをお送りしましたが、次回の幸田レポートもお楽しみに!!

8th EV ENJOY TRIAL in 白浜 第2ヒート総合結果

順位 チーム 車名 記録
1 東海大学木村研究室 ファラデーマジック2 13周
2 first step AISIN AW つばさ52号 12周
3 名城大学Nova Nova 12周
4 The 4th Laboratory 呑龍 11周
5 名城大学エコノパワークラブ MEGV-2004 11周
6 SHIMADA SEV-501kai 11周
7 チームうにゃにゃん亀吉 エコノ亀吉2.5号 11周
8 東京工業大学Meister Lucciola 11周
9 千葉黎明高等学校工学部 RMCエンタープライズ千葉黎明2004β 11周
10 LITTLE QUICKIE-Zo II 和歌山工業高校機械工作クラブA 11周

 

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