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キムヒデのEV Enjoy Trial in 白浜 Final参戦レポート 2006/01/11 22:00

EV Enjoy Trial in 白浜 Final 第1ヒート優勝を目指したCG号の挑戦


いざ、白浜大会へ
温泉地として有名な和歌山県白浜町。この町の山頂に位置する南紀白浜空港の旧滑走路を利用して「EV Enjoy Trial in 白浜」が2005年10月28〜29日に開催された。1周2,460mのコースは滑走路だけあって直線区間が長く、幅30mの折り返しが両サイドにある。一見するとなんの変哲もなさそうであるが、山頂にあることから風が強いのがこのコースの特徴である。過去の大会の情報は、2002年白浜レポート2003年白浜レポート2004年白浜レポートを見て欲しい。

この白浜のEVエコランレース大会は、高校生の自動車工学や環境技術に対する啓蒙を目的として、高校の先生らが中心の和歌山県高等学校教育研究会工業部会が主催してきたものである。高校生を対象とした手作り大会という雰囲気が強かった第1回大会は、1998年に開催され14台のEVエコランカーが参加した。2002年には、企業や大学のエンジニアともに高校生が戦い、よい意味での刺激を与えようという目的で、ワールド・エコノ・ムーブ・グランプリのシリーズ戦に加わり、オープンな大会へと変化した。今年で9回目を迎えた本大会は過去最高の52台がエントリーするまでに成長した。

この大会の特徴としては、第1ヒートは0-400mレース的な勝負が行われることが挙げられる。スタート方法はル・マン式となっていて、ドライバーは30mを走った後にエコランカーに乗り込み、ピットクルーが協力してカウルを閉める。さらに、与えられたエネルギー以外の使用を禁止するエコランレースにありながらバッテリもモータも自由であり、チームワークを育むという目的で、例外的にピットクルーが車を押し出すことも推奨されている。第1ヒートだけでも表彰されるというのも、白浜大会ならではだ。第2ヒートは、通常のエコランレースに戻り12V-3Ahのバッテリを2個搭載して、1時間内の走行距離を競うものである。残念なことに、高校教諭らが中心となって運営し長年続いてきた白浜の大会は今年で最後となり「Final」として行われることになったそうだ。

Finalということもあり、この白浜大会に2003年の筑波サーキットで奇跡的に優勝したCGエコノムーバーで再びチャレンジすることになった。狙うのは0-400m加速で勝敗が決まる第1ヒート優勝である。ところが、CG号は約30kgで他車よりも10kgくらい重い。さらに、白浜大会のドライバーの基本体重は60kgであり、私はダイエットしてもスーツやヘルメットを合わせると75kgはあるので、ここでも15kgもオーバーしている。3割くらい重い総重量をひっくり返して勝つのは大変なことだ・・・。図体がでかくて重たいCG号に、大きくて重たいドライバーが乗って勝つためには、そのハンディーキャップを上回って余りある大きなパワーが必要となる。

エコノムーブ史上最大のパワー
白浜大会第1ヒートを制覇する!! この目的を果たすために、あのチームHIDE3が復活した。まず、CG号に装着可能でパワーがあるモータとして、ミツバのソーラーカー用DDモータが候補に挙がる。モータ+コントローラの重量はエコラン用としては大きすぎるのだが、今回はパワー重視です。重くたってそれを上回るパワーがあればいいんです。前回と同様に、ミツバSCRプロジェクトの内山英和氏に特別にお願いして、ハイパワー仕様にチューニングしていただいた。その結果、短時間であればソーラーカーを動かしてもおつりが出る、5〜8kWの投入電力に耐えられるようになった。通常のエコノムーバー用モータは300〜500Wくらいが最大なので、なんと10倍以上のパワー。他チームが3〜4台モータを積んできてもパワーで負けることはないだろう。内山氏いわく、「危ないのであまり無理をしないでくださいね」とのこと。たしかにこうなるとモータだけでなく車体や電源、タイヤなどにも配慮が必要だ。だんだん心配になってきたので、CG号の設計を担当したZDPの池上敦哉氏に車体の強度面や安全面を確認してみた。「CG号は何をやっても大丈夫なように、必要以上に頑丈に作っていますから問題ないですよ。フロントもディスクブレーキが付いていますから、ばっちりです。」車体の心配が無くなると、一番やっかいなのはエネルギー源だ。

走行時間は、過去のデータから1分程度以内のタイムで優勝できそうである。しかも、0-400mといっても速度が出すぎないように、大会の方で途中に折り返しがあるコース設定としているため、この間に加速2回、減速1回をこなさなくてはならない。スペシャルDDモータで、加速&回生ブレーキは問題ないものの、それに耐えられるバッテリを用意するとなると大変だ。急激な放電と充電に耐えるためにはバッテリ容量を増やす必要があり、そうなると重くなってしまう。しかも、こんな短時間では使い切ることはない。もっと軽くてパワーが出せるもの・・・やっぱり電気二重層キャパシタでしょう!! 電気二重層キャパシタは静電気のかたちで電気を蓄える巨大容量コンデンサであり、化学反応を使わず内部抵抗が小さいのが特徴である。そのため重量あたりの出力(パワー密度)が高いという優れた利点を持っている。そこで、日本ケミコンにCG号のために電気二重層キャパシタの使用をお願いしたところ、特別にOKがもらえた。そして、CG号は角形のDLCAP 2.5V-1000Fを豪勢に40本直列に接続した100V-25Fバンクを手に入れることに成功した。これならば、50A(5kW)を使っても30秒位は加速し続けられそうだ。回生ブレーキを掛けてもキャパシタが吸収しきれなくなることはないので、事実上かけ放題である。そしてモータの駆動力を伝えるタイヤには、グリップ力と耐久性を考慮してソーラーカー用IRCタイヤを選んだ。

いきなりのぶっつけ本番では心配が多いので、いちおう本番と同じセッティングで極秘に某大学の広大な敷地内で1週間前に走行テストを行った。事情があって夜間の走行である。実際に走ってみると、エコラン業界にいる者としては、味わってはいけないような目の覚めるような加速感を覚える。かなりはまりました。元々CG号にはCapacitor Gravity(キャパシタ重力)の開発ネームが与えられていたのだが、まさに文字通りの車となった。テストに携わったメンバーも満足のいく表情である。走行後、タイヤからけっこう臭いが出るものの、グリップも良好である。白浜は元々滑走路なんだからグリップもいいだろうし、ホイールスピンも問題は無さそうだ。回生ブレーキもディスクブレーキも十分な制動力があるので、車体についてはほぼ完璧であると確信しました。心配だったのは、ル・マン式スタート。日頃から運動不足なので、足がもつれてみんなの目の前で転ぶようなことになったらみっともない。一方、第2ヒートの省エネルギーレースの方は、正直なところ私が運転してもどうやっても勝てそうにないので、名誉あるシートを和歌山工業高校出身の井谷君に譲る(押しつける?)ことにした。井谷君本人も、「私が運転してもいいんですか?」と、大変恐縮し、満足そうであった。

やっぱり雨の第1ヒート
1週間くらい前から天気予報を見ていると、どうも雲行きが怪しい。「やばい・・・」 もしかすると雨が降るかも。そうなると、路面が滑りやすくなり強力な加速力が仇となる。これは、ひじょーーーにまずい状況である。しかも、川崎−那智勝浦間を運行しているフェリーも原油高の影響か?運航中止。ただでさえ少ない体力を和歌山までの移動で使い果たしてしまいました。

当日まで天気予報が外れることを期待しながら現地入りするものの、やっぱり雨。なんとか第1ヒート直前に雨が上がるが、相変わらず路面コンディションはウェットのままである。しばらくして路面がだいぶ乾いてきたものの、完全に乾ききる前に自分のスタートの番が来てしまった。まずはル・マン式ダッシュ。かなり本気になって加速する。いちおう中学時代に陸上部の経験はある。しかし、CG 号に乗り込むために止まろうとすると、シューズが滑る。なんとかスキーの要領で止まることができ(だいぶ後傾してるけど)、転ばずに済んだ。陸上部の経験はあまり役に立たなかった。

 

池上さんから発進の合図をもらって、スロットをあまり開けずに発進することにした。「ここは滑走路だし、なんとかグリップしてくれるだろう」とスロットを開ける。タイヤがときどき空転しつつも勢いよくぐいぐいと加速していった。あまりにも滑っちゃうので、予定通り進路を右に取り、ギザギザが付いているグリップの高い路面を使って加速した。まわりの人は、制御不能になっているんじゃないか?と思ったらしいですが、そんなことはありません。

しかし、うまくいったのはここまでであった。グリップ力が少ないため、いちおうかなり早めに回生ブレーキ&ディスクブレーキをかけるものの、思うように効いてくれない。まるでアイスバーンをノーマルタイヤで滑っているような感じだ。そうこう言っているうちに折り返しが来てしまう。リアもロックしない回生ブレーキにもかかわらずグリップ力を失い、テールが流れて始めてきた。逆ハンドルを切って・・・も、間に合わず制御を失ってスピンして止まる。しかし、運良くスピンターン気味に180度回転したところで止まったので、気を取り直して再発進し、ゴールラインを通過した。

 

結果は、圧倒的なパワーにものを言わせ、10秒以上の差を付けてCG号が第1ヒート優勝。もっとスマートに行きたかったのだが、まぁ目標が達成できたのでよしとしよう。後で聞いた話であるが、濡れた路面の影響で、CG号のあとに出走したTGMY Ashidaはコースアウト、大誠テクノ、愛知工大はスピンと大変なことになったらしい。

 

第2ヒートはfirst step AISIN AWが優勝
翌日に行われた第2ヒートは、うって変わって秋晴れの晴天となった。今期絶好調のfirst step AISIN AWのつばさ52号が序盤からトップに立ち、そのまま優勝した。2位は名城大学エコノパワークラブのMEGV-2004。

 

東海大学木村研究室のファラデーマジック2は1周目にオーバースピードでコースアウトしてしてタイムを大幅にロスしてしまう。きっくう!!、コースアウトするなら、昨日の第1ヒートでしょ? さらにこのときにタイヤにダメージを負ったためかスローパンクを起こして後半にエネルギーをロスする。最後は転がることもできずに、手持ちで帰ってくることに。こんな悲惨な状況にありながら、結果はなんとか総合3位に収まった。(下の写真の右上を見るとファラデーマジック2が大きくコースアウトしているのが写ってます。)

 

全7戦で行われる2005 WEM GP戦であるが、AISIN AWは6戦までに4勝を決め最終戦となる幸田サーキットでの結果を待つことなく、2005年シーズンのGP戦総合優勝までも手に入れた。一方、高校生を主体としたスクールクラスでは、横須賀工業高校機械部のKUROFUNEが初優勝を決めた。2位は地元の和歌山工業高校機械工作クラブ、3位は千葉黎明高校工学部。そうそう、CG号の第2ヒートは25位で、大きさの割には意外と健闘した方ではないだろうか。

ZDPのミラクルでんちくんは、MagnesiaのGoHan D号(GoHanでんちくん)として出場。カーボン製20インチ用超ワイドリムのテストを行っていました。30km以上を走行し総合7位とまずまずの成績を残せたようです。もしかするとこのワイドリムは販売されるかもしれません。

今回でFinalを迎え、一つの区切りをつけたEV Enjoy Trial in 白浜であるが、おそらく実際に運営に携わっている人が感じる以上に、大きな成果を出していると思う。高校を卒業し、進学あるいは就職した生徒は、間違いなく実物で学んだ経験と勘を得ているのである。この辺は明らかに通常の大学生にはない能力であり、企業の採用担当者の評価も高い。今後も、何らかの形でこのような工学教育が続けられることを期待します。

 

最後に、2006年のWEM GPシリーズ戦を予想する。好調なAISIN AWに対して、ミツバが復活をかけて新型車を投入するようである。間違いなくレベルの高い熱戦が繰り広げることになるだろう。(写真については大会オフィシャルの写真を担当した:嶋田光宏氏の協力を得ました。ありがとうございました。)(k)

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